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自分自身が研究道具となる!~質的研究の魅力~ 2017年7月15~16日「質的研究とSCATのセミナー・ワークショップ」

NO.57

自分自身が研究道具となる!~質的研究の魅力~ 2017年7月15~16日「質的研究とSCATのセミナー・ワークショップ」

平成29年度 岡山大学病院 総合内科 小比賀 美香子 先生

 
岡山ではこれまで、名古屋大学大学院教育発達科学研究科 教授 大谷尚先生を講師としてお迎えし、「質的研究とSCATのセミナー・ワークショップ」を3回開催しています。4回目となった今回、光栄にも副講師を務めさせて頂きましたのでご報告いたします。

 
【質的研究の全体像を俯瞰し、分析を体験】


医学研究において「質的研究」は「量的研究」とともに研究手法の両輪をなすものですが、近年、「質的研究」に対して関心が高まってきています。2日間にわたる本ワークショップでは、医学研究における「質的研究」の位置づけや「量的研究」との相違などの概説の後、大谷先生が開発したSCAT( Steps for Coding and Theorization) の手法を用いて、実際に質的データの分析に取り組みました。今回は、岡山のみならず、東京や大阪と遠方から、また医学、薬学、看護と幅広い分野から17人の方のご参加がありました。


 
【質的研究の魅力について】


ここで「質的研究」とその魅力について述べさせて頂きます。「量的研究」では「事実」に関する知見を追究するのに対し、「質的研究」では「意味」に関する知見を追究します。前者ではデータは数値であり、統計処理などの客観的手続きで分析するのに対し、後者ではデータは主にことばであり、解釈などの主体的手続きと文献による検証で分析します。「質的研究」では、研究道具は研究者自身となります。よって、同じデータでも研究者によって分析結果は異なるわけで、「質的研究」がサイエンスでもあり、アートでもある所以です。私自身が初学者ながら「質的研究」にとても惹かれるのは、この分析が、創造的な作業であり、とても楽しいからです。科学でありながら、芸術作品を完成させていく感覚です。なお、自分自身が良い研究道具となるため、研究者は自己省察(リフレクション)を通じて自分自身を理解しておく必要がありますが、自分がどんな人間であるかを理解しておくことは、医療者としても大事なことであると考えています。


 


【グループ発表はまるで展覧会】


 ワークショップでは、1日目の午後から、4~5人のグループに分かれて、医師と患者家族の会話をSCATで分析し、その結果を2日目の夕方に、グループ毎に発表しました。分析中は、活発なディスカッションが行われ、時間的にも内容的にも、全グループで分析がスムーズに進みました。それぞれの分析に特徴があり、大変興味深い内容でした。グループ発表の時間は、展覧会で芸術鑑賞をしている感覚になるのは、私だけでしょうか?いつも多くの気づきが得られる、贅沢な時間です。最後は、参加者が事前に提出した質的研究に対する質問に対し、大谷先生がスライドを用意してひとつひとつ丁寧に回答、解説して下さり、終了いたしました。参加者の皆様には、今後質的研究を始めていく、あるいは深めていく上で、多くのことを持ち帰って頂けたのではないかと思います。


 
【ワークショップを終えて】


「医療はサイエンスであり、アートである」と言われていますが、まだまだアートの部分の教育や研究が不足していることを痛感しています。アート部分の研究には、「質的研究」が有効と思われ、今後のこのようなワークショップを通じて仲間を増やし、研究者として新たな知見を発信していけるよう精進してまいります。


 大谷先生、今回も大変ご多忙の中、来岡頂き、熱心にご指導下さいまして誠に有難うございました。


 

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